時計兎

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  あたしは姉の隣で勉強してた。姉はあたしの大嫌いな歴史の本を読んで、あたしに年号やら人物の名前やら質問してくる。   「このハゲの名前は?」   「知らないわよ、……フラスコなんとか…でしょ?」   「馬鹿ね!キリスト教を広めたハゲもわからないの?」   そう言って姉は、あたしを分厚い本で殴った。その拍子に首の筋がつった。   「痛い!首つったじゃない!」   すると、姉の後ろの草むらから兎が飛び出してきた。   「大変だ大変だ!遅刻だぞ!王様に首を切られる!」   なんとその兎は二足歩行で、スーツを着ている。時計をぶら下げ、時間を気にしながら走っている。   「聞いてるのありす!」   姉がまたあたしを本で殴ると、首は治った。   「よっしゃ!治った!兎、待ってよ!」   すると兎は走りながら言う。   「初対面でタメグチですか!?気に入りません、さようなら」   あたしは慌てて立ち上がり、兎の後を追って森に入った。後ろから、姉の怒鳴る声が聞こえたが気にしない。あっという間に兎は見えなくなった。   「さすが兎ね、二足歩行でも足が早いわ」と、舌打ちしていると、よくあるようなパターンで草むらの中に小さな扉があった。   開けて中を覗くと意外に広く、無理矢理入る事にした。おしりで詰まってしまったのだが、後から追い掛けてきた姉におしりを蹴り飛ばされ、あたしはストンと中に落ちた。
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