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ずっと落ちている。底は見えない。永遠に落ちていく気がした。
「それにしても、落ちる速度がおかしいわ。遅すぎるもの。」
すると本が浮いていた。落ちながら取り、開くとエロ本だった。
「あたしが男なら、喜んで見たでしょうけど、何が悲しくてあたしが女の裸見なきゃなんないのよ」
すると本の中にいる裸の女がいきなり老けた。悲しそうに泣いている。気持ち悪くなって手を離すと、有り得ない速さで上に舞い上がった。
「ここ、変よね…」
するとまた本が浮いていた。また取って開くと、音楽雑誌だった。
「わ、ヤバイ!新曲出るんだ!買わなきゃ!!」
すると本は勝手にくしゃくしゃになり、口の形を作って歌いだした。
蛍の光…。なんて趣味だろう。それをずっと聞きながら、あたしは宙を寝転んだり踊ったりした。
「…他に歌えないの?」
ありすが聞いてみると、本はあくびをした。
下を見ると、ほんのり明るかった。いつの間にか本は消え、ありすは着陸した。
「あー疲れた。あんなに長いこと落ちると、飽きるわね」
そこは部屋だった。真ん中に机があり、その上に「あたしを飲んでください。」と書いてある液体があった。
「こんなシーン、見たことあるわ。…不思議の国のアリスで。」
確かこれを飲むと小さくなって、机の上にある鍵が取れなくなる。机の上の鍵を探したが、見当たらない。ありすは腹が立った。
「あたしはありすだけど、平仮名のありすよ!もうやだ~」
とりあえず、鍵がミクロで見えないのかもしれない、と思い、机の上を払って、液体を飲んだ。
予想通り、体が小さくなっていく。
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