序章

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牢獄の中に女性が一人、赤子を愛しげに抱いて泣いていた。 「ごめんなさい…ジュラン…。ごめんなさい…」 何度も呟かれる言葉は、赤子への謝罪。 薄暗い肌寒い牢獄に月の光が射し込み、かろうじてわかる赤子の表情は、母親に抱かれて健やかに眠る幸せな寝顔だった。 女性の悲しみが刻々とより深くなっていく。 この赤子の行く末は「贄」と決まっているのだ。 今この国の長老と呼ばれる神に仕えし、最高権力者達がその日取りを決めている。 しかし、可能性が高いのは今日の夜明けと共にだ…。 この国の王妃である女性、そして、この国の王子であるジュランが、なぜそのような運命に陥れられたかは、少し過去に戻らなければならない。
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