出逢い

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「ただいま!」 真人が、築30年のアパートのアルミ製の少し錆び付いた自宅の玄関のドアを開けると、小学3年になる愛娘の奈美が、屈託のない笑みを浮かべながら、走り寄ってきた。 「パパ、お帰り!」 真人は、奈美を抱き上げた。 工事現場で、土木作業員として働く真人のありふれた日常。 だが、真人はこの愛娘・奈美の笑顔が何よりの栄養剤になっていた。 玄関のドアを開けると、笑顔の奈美が駆け寄ってきて、今日、学校であったこと、友達と遊んだことを奈美から聞く。 そして、一緒にご飯を作り、一緒に食べて、一緒にお風呂に入り、一緒に眠りにつく。 そんな変わり映えの無い日常も真人にとっては掛け替えの無い物になっていた。 奈美の笑顔に励まされ、どんなに辛い事があっても頑張れた。 好きだった煙草も、趣味だった釣りも、嗜(たしな)む程度ではあったが酒も辞めた。 真人は奈美の為に全てを捨て、一心不乱に頑張っていた。
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