4240人が本棚に入れています
本棚に追加
キュルルルルルッ!
キュルルルルルッ!
ブゥゥン!
エンジンは、何事も無かったかの様に息を吹き返した。
「掛かりましたよ。このまま、なるべくエンジンは切らないで走って下さいね。あと、またエンストしてもエンジン掛からなくなるかも知れないから気を付けて下さいね」
そう言いながら何気なく車内を見渡すとマニュアル車なのに気が付いた。
「マニュアルなんですね。女の人でマニュアルなんて珍しいですね」
真人が気さくに話し掛けるが、女性は恥ずかしそうに俯いたままだった。
「じゃあ、気を付けて運転してって下さいね」
真人は女性の車からブースターを外し、トランクにしまうと7時近くなのに気が付いた。
「やべっ…。完全に遅刻だ…」
小汚い自分の車の運転席に座りエンジンを掛けようとすると、女性が耳を澄まさないと聞き取れない程の声量で話しかけてきた。
「はい?」
聞き取れなかった真人は手動式のウィンドウを開けて顔を少し出した。
「あの…。ああありがとうございました…」
女性は俯き加減に謝礼を述べた
「いいですよ!困った時はお互い様ですから!それじゃ気を付けて!」
真人は、女性に1つ会釈をすると何事も無かった様に車を仕事場へと走らせた。
最初のコメントを投稿しよう!