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……――ッ…、
次いで届いた、甲高い音。
…ッ、…―ッ……、
二度、三度。
確かに聞こえた、聞き覚えのある音。
「……っ!」
反射的に身を起こす。
起きた拍子に杯からこぼれた酒が手を濡らし。
「あ、もったいない」
…つい舐めてしまう貧乏性。
「…違う違う」
場違いな行動に自分で溜息。
少しだけ躊躇して、まだ甘露が残る杯を砂の上に放り出し。
傍らに置いていた筒を取り、音のした方へ向けて覗き込む。
…丸く区切られた視界。
少しだけ低い、奥の砂丘のその向こう。
星々の光を受けて淡く蒼く映る砂ではなく。
何やらにやけた髭面が視界いっぱいに広がった。
「………」
片目に当てた筒の根本を、少しずつ、ひねる。
拡大されていた男の顔が遠ざかり。
その上半身と、周りにいる三人の男達の姿が目に入った。
最初の男が握るのは、自分と同じ遠見の筒…
…他三人が握るのは、華美な装飾の施された金属の筒だった。
「…銃……。…狩人か?」
砂漠では珍しくない、殺傷用の筒。
危険な生物を撃つ以外には使用を禁じられた、砂漠ならではの武器。
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