黒い月の下で

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生きるには過酷な環境である広大な砂地には、他の環境では考えにくい独自の進化を遂げた生命が多く存在する。 それは時として人間を襲い、 時には一つの集落を壊滅させる事さえある。 故に、人間相手に使用するには過ぎた威力を持ち、<魔道>ソーサリィの前ではさしたる効果を成せない連射の利かない飛び道具は、一撃離脱の概念の元、砂漠地帯に広まった。 …決して、不用意に使って良い武器ではない。 何故なら、それは… …ざ…ぁ…ざざ……ざざぁ…… 風の音に混ざり、砂よりも遥かに体積の大きな何者かが砂を泳ぐ音。 …燃える砂を用いる銃は、その音と光で<砂に棲む者>達を引き寄せる。 それが夜なら… 砂漠の生命が活気付く夜ならば尚更の事。 「…酔っ払いどもめ」 遠見の筒が見せる男達は、褐色の頬に赤みを差し。 笑いながら、さっきまでの自分と同じように杯を口にして。 …あろう事か、燃える砂をもう一度、銃口に注いでいるではないか。 一体、何がそんなに楽しいのか? 気まぐれに向けた、遠見の筒。 彼らの獲物は何なのか。 …"それ"を見つけた瞬間、興味は怒りへと変貌した。
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