黒い月の下で

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男達が手にするそれは、<砂の國>有数の都市… …と言っても、砂漠を出れば小都市未満の街でしかないが、アスタルテの武器商から買った新型。 試し撃ちが示す有効射程は、旧型のおよそ倍。 威力はまだ未知数だが、値段も倍はしたのだ。 倍の威力を夢見ても罰は当たるまい。 「………」 …笑い声を上げる男達と裏腹に、静かに銃に弾丸を込める者が一人。 同じ集団でありながら、意識が違う一人。 中年と呼んで差し支えない三人の男とは異なり、年若い… いや、あまりに若すぎる最後の一人。 どう見ても、十を過ぎてるようには見えず。 かと言って、物事が分かっていないただの無邪気な子供にも見えない。 …閃光。 狂った笛のように甲高い炸裂音は、文字通り必死に逃げる"的"を大きく外れ。 夜のどこかに呑まれて消える。 「……外した」 無表情そのもののつぶやき。 一拍の間、下品な笑いが再び湧いた。 「ルシュドっ!お前ってヤツは…っ!!」 ヒィヒィと、呼吸困難寸前の大爆笑。 少年は何がおかしいのか分からないように、無表情のまま小首を傾げた。
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