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…異常だった。
有り体に言って、異常だった。
砂漠とは、特にこの<砂の國>とは、世界有数の危険地帯だ。
そんな場所で訳が分からなくなる程酩酊するのは、ただの自殺行為でしかない。
ましてや、何の意味もなく銃を撃つなど正気の沙汰ではなかった。
…酒を口にした三人の男達。
ゆったりとした、軽く通気性の良い砂色の服…
砂漠を渡る者の標準的な旅装束に、砂嵐に備えた厚手の外套。
頭には白い布を巻き、足元は分厚いブーツで固める。
けして素人ではない…
砂漠を侮っていない、旅慣れた玄人の選択。
彼らの失敗は、酒を飲んだ事ではなく。
年端も行かない少年がどうやって酒を調達してきたか、そして、その酒に何の疑念も抱かなかった事だった。
「下手くそめ!俺が手本を見せてやる!」
"遠見の筒"、遠望鏡を持っていた男が、ルシュドと呼ばれた少年から銃を引ったくる。
そのまま手早い動作で、たっぷり一分ほど掛けて次弾を装填。
夜の砂漠を逃げる"的"へ銃口を向けた。
…完全なる、異常。
自分の手が、がくがくと震え、照準も何も無いにも関わらず。
まったくそれに気付かない…
気付けない、常軌を逸した男の精神。
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