2121人が本棚に入れています
本棚に追加
光の円の中には、魔道書に描かれていたのに少しだけ似た、わけのわからない図が描かれていた。
『かの者の傷を癒せ』
そして言葉を唱えると、その光は岩淵に吸い込まれて消える。
油汗を浮かべ、苦しそうにしていた岩淵の表情が少しだけ和らいだように思えた。
魔力を傷の場所に集めて、治癒能力を活性化させたのか。
何が起こったのかくらい俺でもわかる。
基本的な魔法の知識だけは、習わされたから覚えてるんだ。
その時は、全く魔法が使えないとは思ってもみなかったからな。
俺もオヤジも。
それとも、俺が魔道書を受け取ることを知って……の訳はねぇか。
『おい、あっちで誰かが魔法を使ってる。
行くぞ』
「ああ」
岩淵の様子も気になるが、それ以上にほかのやつらも気になる。
原因がまだ暴れまわっているなら――。
最悪の可能性を考えないようにして、俺は前を向く。
風が俺を包み、再び魔法で移動する。
最初のコメントを投稿しよう!