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ぴりぴりと刺すような空気に、俺は魔道書をきつく抱きしめる。
状況は五分、といいたいところだが……転校生の方が少しだが押されている。
「いい加減、守りながら戦うのは辛くなってきたんじゃねぇの?」
男がにやりと笑いながら言うと、転校生はそれに答えることをせず唾を吐き捨てた。
いや、吐き捨てたのは――血だ。
鮮やかな赤をしている。
「残念だが、私は守るために戦うのが常でな。
お前の方こそ、探し人は諦めてさっさと帰った方がいいんじゃないか」
転校生は床を踏む足に更に力を入れる。
次の瞬間、床を蹴った転校生がその手に氷の棍を作り飛び込む。
だけどその一撃が決まる前に、男がその場に風の盾を残して飛び退く。
飛び退いた先の机がにぎやかな音を立てて倒れた。
なにが、起こっているんだ?
どうして転校生が戦っている?
そもそもあれは誰だ?
答えなんて出ない質問が俺の頭に浮かぶ。
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