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『あと一撃、それで終わるな』
何かを予言するようにシキが呟き、俺は慌てて目の前の光景に意識を戻す。
転校生は男を睨みつけ、視界いっぱいに氷の錐を作り出した。
「其を包みて
絶対零度の檻となせ」
氷は男を取り囲み、別の氷との間に蔦を伸ばすように腕を伸ばす。
氷と氷が繋がり、男を完全に包み込んだ。
少なくとも俺にはそう思えた。
けれど男がにやりと余裕の笑みを浮かべ、ポケットからライターを取り出した。
「焔の民よ
冷たき者を喰らい尽くせ」
ライターから身長の何倍のある火が立ち上がり――それが消えた時には、氷はどこにも残っていなかった。
「だから言ったろ?
弱者を強者が守るのは愚かなことだってな。弱者は踏みにじるものなんだよ」
男は足元に転がっていた、誰かの忘れ物だと思うシャーペンを踏みつけた。
それはあっけなく壊れ、小さな破壊音が響いた。
『そりゃあ違うな。あまり弱者を見くびってると、そのうち寝首をかかれるぞ。
それに、少なくともそれはテメェより強ぇし』
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