1.魔道書使い、誕生?

38/43
前へ
/331ページ
次へ
     ため息を吐いて、教室の隅でうずくまる転校生に近づく。苦しそうに肩で息をする彼女に手を伸ばす。     『凌、そいつに触れろ』      癒しの魔法をかけるよう言おうと思ったのだが、ほかに良い手があるらしい。      言われるままに彼女に触れると、悪寒のようなものが身体を走る。  魔道書から、彼女に触れている手まで――妙な流れが走った。      何をしたよ? シキ?     『何があった? 話せ』      無情にもシキはいい捨てた。     「シキ! 具合の悪いやつに何をさせる気だ!  休ませてからでも問題ねぇだろ?」     「……いや、魔力を使いすぎただけだ。  わけてもらったから、動ける。問題ない」      彼女は身体を起こすと、何度か深呼吸を繰り返す。  どこか悪いところがないか探すように、身体を伸ばした後――腹部、それから顔に手をあてて魔法を使う。      そういや、さっき血を吐いてたんだよな。     「それで何が起こったのかだが――」      彼女が話そうとした時だった。強い風と一緒に誰かが飛び込んできた。  
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2121人が本棚に入れています
本棚に追加