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親族は俺が魔法を使えないことを知っているから何も言わないが、そうじゃない人は俺があまりにもオヤジに似ているせいで――でかすぎる期待を寄せてくれる。
いわく、あの巨岩をちょっと粉砕してみせてくれだとか、氷で細かい細工の入った滑り台を作ってくれだとか、畑が雑草だらけになったから雑草だけを焼いてくれだとか……無理難題を押し付けてくれるわけだ。
で、俺が魔法を使えないことを知ると、頼むから今の発言はオヤジには言わないでくれと言い出してくれる。
まあ、そういうふざけたやつは例外なく俺のコブシの餌食にしてきたんだけども。
「ん、今日もカンペキ!」
いらん事を考えながら、着替えを終える。
紺のブレザーに同色のズボン、ネクタイは……メンドウなので後ですることにして、いつも通りの俺が鏡の中にいた。
そうだ、いくらオヤジが偉いとはいえ、俺にあんな無理を言うのが間違いなんだ。
俺は学園の生徒でもなけりゃ、そもそも魔法使いの卵ですらない。
どこにでもいる一般人なんだ。
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