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冗談でなく、小さい時は俺はオヤジのことを俺と良く似たたまに来るおっさん程度にしか思っていなかった。
そのくらい、たまにしか顔を見る機会がなかった。
まあ、テレビによく出ていたから顔を忘れるっつうことはなかったが。
とにかく、そんなオヤジは俺のことに殆ど口を出してくることはなかった。
「皇にぃがこの学校にいなきゃ、俺は普通の学校に通っていただろうしな」
それも、オヤジの息子だって誰も気付かないようなところ。そのくらい俺にとってのオヤジは、微妙な存在だったりする。
「そういえばそうだったね。
あの頃の凌は、俺の後をついてまわってとっても可愛かったね」
聞きなれた声に振り返ると、そこには仮面のように笑顔を張り付けた皇にぃがいた。
「こ、皇にぃ?
生徒会室で待ってるんじゃなかったっけ?」
慌てて椅子から立ち上がり、窓際に下がる。
声が上擦っているのはたぶん、気のせいじゃない。
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