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「やれって言うんだったらやるよ?
俺が本気を出して、凌に怪我をさせるようなことは嫌だから手加減しただけだしね」
『はっ、怪我だと?
そんなもんは、自分の身を守ってから言うんだな!』
シキはそう言って笑うと、再びパチンと音を鳴らす。
宙に現れたのはいくつもの風の繭のようなもの。それらはわずかに水を含み、放電を繰り返す。
『安心しろ、殺しゃあしねぇよ』
も一度パチンと音が鳴り、皇にぃの足元からいくつもの土塊が伸びる。それらは皇にぃを取り囲もうと動く。
「凌、怪我させたらゴメンな」
もにもにと土塊が皇にぃを包んでいくなかで、皇にぃは静かな口調で呟いた。
皇にぃ、もしかしなくても本気で怒ってないかっ!?
「シ、シキっ!
こ、皇にぃ、本気だっ!」
あああああっ!
駄目だ、無理だ、絶望だっ!
怒った皇にぃは洒落になんないんだよ!
オヤジとタメ張れるくらいにっ!
俺はそれを端でずっと見てきたんだっ!
『そんだけ狼狽するつーことは、楽しめそうだな』
「だから楽しんでる場合じゃねぇつーの!」
俺がそう怒鳴ると、シキは『何があっても俺を離すなよ』と言って地面を蹴った。
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