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「どれだけ人を殺せば、気が済むの?」
姿を現したのは、少年だった。
ブラウンのショートヘアーに、ダークブラウンの瞳。
小柄で華奢な体格だ。
『識別開始。識別結果、ディドレット軍の【機械兵士】。』
「【機械兵士】…!? あの子が…!?」
『優先順位変更。直ちに【機械兵士】を破壊する。』
「いいよ、そっちの方がやりやすくて。」
少年の左目が、ダークブラウンから黄色に変わった。
『破壊する!!』
【戦獣】が少年に襲いかかる。
「危ない!!」
ゴキャッ!!
鈍い音がした。
【戦獣】の爪が少年のいる場所に命中した。
「あぁ…!!」
『命中確認。優先順位変こっ…!!』
「命中? 普通、相手に効果的なダメージを与えてから言うんじゃないの?」
少年は無傷だ。
しかも あろう事か、片手で難なく 【戦獣】を留めている。
「頭の中まで機械のクセに、言葉の意味の理解は出来てないみたいだね。」
少年が受け止めた方の手を握り締める。
バキッ!!
メキメキッ!!
意図も簡単に 【戦獣】の足が砕かれていく。
『ギ…、ギャッ…!!』
少年が【戦獣】を自分の方に引っ張り寄せ、空いている方の手で拳を作る。
「壊れて知るがいいさ。人の痛みを…!!」
少年の拳が、【戦獣】の腹部に のめり込んだ。
『ガガガ、ガッ…!!』
【戦獣】が痙攣する様に ビクビクする。
そして 暫くすると動かなくなった。
少年は【戦獣】が完全に動かなくなったのを確認すると、【戦獣】の液体で黒く染まった拳を引き抜くと同時に、振り払う様にして【戦獣】を放り投げた。
少年はポケットから携帯電話を取り出すと、キーを押して 電話を掛ける。
「こちら フィロ・スティーラ・セイルフィスト中尉。南地区の【戦獣】の破壊、完了しました。」
名前を聞いた途端、カスミはドキンとした。
― 今、フィロって…!
カスミの心が動揺に揺れる。
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