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「怪我はありませんか?」
フィロは携帯での通信を終えると、カスミ達の怪我の有無を確認する。
「あ…、大丈夫…。」
「よかった。この地区の【戦獣】は全て破壊しました。他の地区は、同じ部隊の【機械兵士】が担当しています。直に避難勧告も解除されると思います。」
先程まで 【戦獣】に対し、冷たい言葉を浴びせ、しかも小さな身体一つで 簡単に【戦獣】を破壊したとは思えない。
元のダークブラウンの瞳に戻ると、普通の人間と何ら変わりない少年だ。
笑顔も人間そのものだ。
そんな少年を見ると、背筋にゾッと悪寒が走る。
「どうかしましたか?」
「あ、ううん…! その…、助けてくれて ありがとう…。」
「いいんです。貴女方を守るのが、ボク達の使命ですから。」
「そ、そう…ね…。」
カスミの中に、滞りが生まれる。
聞くべきなのか。
彼が、幼い頃よく一緒に遊んだ“フィロ”なのかを。
「あ、あの、貴方は…!」
「はい?」
なかなか言い出せない。
聞こうとしても、つい口ごもってしまう。
「何か?」
「…あの、貴方は“フィロ”なの…!?」
「はい。僕の名前はフィロ。フィロ・スティーラ・セイルフィストです。」
少年は名乗ると、ニッコリと笑顔を見せた。
― ああ、そうだ。この笑顔、間違いない…!
「お、覚えてる? 私、小さい頃よく遊んだカスミよ。」
「え…?」
フィロはキョトンとした。
「あっちにいるのは、妹のルカ。私達、ずっと貴方が帰って来るのを待ってたんだよ?」
「………。」
「フィロ!」
「違う!」
フィロは否定した。
「え?」
「僕は確かにフィロです。でも、貴女達が知ってるフィロなんかじゃない!」
「ど、どういう事…!?」
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