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襲撃から数時間が経った。
家に戻ったカスミ達は、部屋に閉じこもっていた。
暗い部屋の中、カスミはベッドに蹲っていた。
“貴女達が知ってるフィロなんかじゃない!”
確かにフィロだった。
だが、フィロではなかった。
フィロなのに、フィロではない。
未だに止まぬ激しい鼓動。
「フィロ…。」
カスミの目に うっすらと涙が滲んだ。
一方、フィロは左腕の処置を施してもらった後、基地として宿泊しているホテルの自室にいた。
カスミと同じ様に ベッドに横になり、枕を抱えて蹲っていた。
― 何故あんな事を言ってしまったんだろう…。
先程、何故 自分がカスミに対して冷たい言葉を言い放ったのか分からない。
無意識に否定してしまったのか、それとも…。
「…最悪。」
ポツリと呟くと、フィロは枕に顔を埋めた。
「ルカ。」
立ち直ったカスミが居間に来る。
ルカはソファーで膝を抱えて座っていた。
「だいぶ落ち着いたみたいだから、ちょっと買い物に行って来るね。」
「いってらっしゃい…。」
ルカは顔を上げず、返事をした。
落ち込んでいるルカを心配な面持ちで見守ると、カスミは玄関に向かい、靴を履いた。
扉を開けると、外は大雨が降っていた。
カスミはビニール傘を差し、外に出ていった。
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