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住宅街を歩いていると、あちらこちらに軍人が作業をしている。
数時間前までは何にもなかった道が、今は荒れ放題だ。
― たった1回の襲撃で こんなになるなんて…。
見慣れた風景が、襲撃によって悲惨になってしまった事にカスミは胸を痛めた。
時には 道端に青のビニールシートに包まれた犠牲者も垣間見え、その傍らで泣きじゃくる者もいた。
そんな光景に目を逸らしたくなる。
「お疲れ様です、ベルウッド少尉!」
兵士達が雨合羽を着た小柄な人物に向かって敬礼をしていた。
「お疲れ様です。被害状況は?」
「はっ。倒壊した建物は全部で20軒。犠牲者17人。行方不明者5人。負傷者は多数と見られます。」
「分かりました。引き続き、負傷者の応急処置と、行方不明者の捜索を。それから亡くなった方逹のご遺体は丁重に。」
「はっ!」
兵士達はビシッと敬礼すると、各々の持ち場に就いた。
「あ、あの…!」
カスミが声を掛ける。
「何でしょう。」
雨合羽の人物がフードを取った。
アクアブルーのお下げ。
スノーリアだ。
先程まで テキパキと指示を出していた者の素顔が少女である事に、カスミは驚きを隠せない。
「あの、貴女達の軍にフィロって子いませんか?」
「フィロ…? まさか、スティーラ中尉の事でしょうか?」
「はい。」
「ええ。私の所属部隊の副隊長ですよ。」
「彼に会いたいんです。さっき助けてもらって…。」
「失礼ですが、貴女は中尉のお知り合いの方ですか?」
「はい。名前は、カスミ・ルーシスです。フィロは、私の幼馴染みなんです。」
「スティーラ中尉の…!?」
スノーリアは目を丸くした。
「分かりました。多分 今は基地で休まれていると思いますよ。ご案内します。」
意外に すんなりだ。
否定されるかと思って始めは緊張したが、スノーリアの許可で ホッと安堵の溜め息を吐いた。
「あ、一つ言っておきます。基地の場所は 口外になさらないように お願いしますね。」
「はい。」
カスミはスノーリアの案内で、基地へと向かった。
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