1089人が本棚に入れています
本棚に追加
曇天が続く空の下、フィロは空に向かう様に聳え立つ黒いタワーの前に立っていた。
生温い風がブラウンの髪を掠め、白い頬に吹き付ける。
フィロの瞳に映るのは、ただ一点のみ。
それは、タワーの天辺。
そこに、世界を再び悲しみや混乱、憎しみに陥れた者がいる。
フィロは目を閉じ、手を握り締め、足を一歩踏み出す。
その直後。
ビー!!
ビー!!
けたたましい警報音が鳴り響く。
それを聞いたのか、タワーから黒い無数の影が群がる蝿(ハエ)の様に飛び交い、こちらに向かって来る。
1つ1つの黒い影を見ると、ギョロリとした1つ目玉の巨大なカラスのようなものが、こちらに向かってくる。
フィロは静かに目を開く。
それと同時に、フィロの瞳が深紅に染まる。
直後、装備していたナイフを両手に握り、地面を蹴る。
目にも止まらぬ速さで、荒野を駆け抜ける。
― もう、誰も犠牲になんかさせない!!
「ああああああああああ!!!」
フィロの雄叫びと共に、爆音が空に谺した。
最初のコメントを投稿しよう!