【廃病院/頭脳戦】

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まず尚美さんが、この空間から消え去った。 つまり現実世界への帰還だ。 音のしなくなった暗闇の空間。 そこに一人とり残された私。 一人というこの状況が、辺りをよりいっそう気味悪く感じさせた。 恐怖感がじわじわと増してくる。 ……思わず身震い。 (私も早く帰ろう) そう思いながら、私はゲーム画面を見つめた。 そしてアメリーの部屋を覗く。 「アメリー、今から帰るけど良い?」 『う?』 アメリーはまだ考え込んでいた。 『舞、帰る?うん、分かった! ……あっ、舞』 アメリーは立ち上がり、 何かを思い出したように、枕元へ走る。 そして袋の様な物を持って、また戻ってきた。 何故かその袋を覗き込み、アメリーは悲しそうな表情。 「どうしたの?」 思わず尋ねる。 『舞、飴があまりないよ……』 アメリーは、袋をひっくり返す。 カラフルな飴が、コロコロッと三個、床に落ちていった。 どうやらその袋は、アメリーの飴袋だったらしい。 私はクスッと笑みを溢す。 「ふふっ、分かったわ。また沢山買っておくね」 『……!やった、ありがと、舞!楽しみ』 アメリーは、いつものニコニコ笑顔。 「じゃあまた後でね」 私はアメリーに手を振ると、ゲーム画面の“目を開ける”を選択。 その瞬間、ゲーム機からまばゆい閃光が放たれた。 それと同時に、私の意識はだんだんと薄れていく。
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