【廃病院/頭脳戦】

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杉浦さんは真剣な顔で喋り出す。 「お前が何度も何度も負けるからだ。ほら、あれだ。仏の顔も三度までって言うだろ」 一瞬にして、室内がシーンとなった。 ほ、仏……? 杉浦さんが……? と言うより、杉浦さんの口から、そんな言葉が聞けるとは思わなかった。 ――ヤバい! これは不意打ちだ。 思わず私達は顔を見合わせる。 途端に笑いが込みあげてきた。 「プ……ッ……クッ……」 吹き出しそうになるのを、私は必死に堪える。 案の定、杉浦さんは不思議そうに私達を見てきた。 「なんだ二人してニヤニヤしやがって。気味悪いな……」 ――ブハッ! 突如、誰かが吹き出す声がする。 見ると朝霧さんだった。 なんと朝霧さんは、肩を揺らしながら笑っているではないか! いくらなんでもこれは……ばれるって! ヒヤヒヤしながら、私は杉浦さんに視線をやる。 しかし杉浦さんの表情は、何故か笑っていた。 「ははっ、馬鹿じゃないの?思い出し笑いかよ? てか、一人で笑う奴があるか。朝霧……お前変わってんな」 「……あ、いや、はい。すみません。本当に……」 朝霧さんは、かなり気まずそうに苦笑いをしている。 どうやら杉浦さんは、自分の発言が笑いの元だと気付いていないようだ。 なんにしろ助かった。 一安心である。 杉浦さんは、たいして気にする様子もなく、ゲーム機を操作しだした。 「おい太一、機能はどこ失った?」 「足っす。 杉浦さん、すみません」 太一さんは、申し訳なさそうに頭をかいた。 「……ったくよ。しゃーねえな」 どうやら杉浦さんは、今から太一さんの足神経機能を取り戻そうとしているらしい。 これは……杉浦さんの戦闘が見れるチャンスだ!!
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