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返答にシロウサギは真紅の目を細めて笑った。
「君に、お願いがあるんだ。アリスを…僕の代わりに…守って下さい。守るはずの僕から…」
そしてアリスを導いて下さい
「……………」
「これは僕からの最初で最後のお願いです。僕らのアリスの為にも…。彼女は望んでいる。君を………求めて居るだろう」
シロウサギは猫を切なげに見つめ、微笑んだ。
これが最後の彼の微笑み。
「シロウサギ……君が、そしてアリスが望むなら」
猫はにんまり顔で彼に笑む。
シロウサギの頬を一つの滴が流れ
次の瞬間
彼は消えた。
遥か彼方のアリスの元へ
優しくお人好しのシロウサギは最後に魔法をかけた。
余りに鮮烈な『出来事』を忘れさせる魔法。記憶を歪ませ歪みの国へ誘う魔法。
彼なりの優しさなのだろうが、猫にはただのお節介にしか思えない、秘密の魔法。
そしてシロウサギの言ったとおり、アリスは無意識ながら僕らに真実への導きを求めた。きこえないけど聞こえる。猫は耳がいいから。
あぁ
泣いている
僕らのアリスが
「アリス…」
僕らのアリス
君が望むなら…
僕は君を連れていくよ
再び歪みの国へ
真実の場所へ
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