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俺、ミヤ(弥夜)が全てを失いかけることになったのは、中学生2年になるちょっと前。
まだ冬と春の間の季節。
その日は寒く、雨が降っていたんだ。
――なにかが変わることを望んで、それでも諦めて、なにも変わらない今日が始まると思ったんだ――
「ミヤ、今日も学校行かないの? 僕、先いくよ?」
「ん、いくかわかんね。ミヨ(弥代)先いってていーよ」
名前で分かるだろうが、俺ミヤとミヨは双子の兄弟だ。
「いつも『わかんね』じゃん。今日こそきてよね。みんな待ってるよ」
「はいはい」
いつも繰り返されるやりとり。
俺の一日はミヨとの会話ではじまり、ミヨとの会話で終わる。
俺にとって世界でいちばん大切な存在。それがミヨ。
俺の片割れ。もうひとりの俺。
さっきの会話で分かったと思うが、俺は学校へいっていない。
いわゆる不登校だ。
実際みんなが待っているのかわからない。
そんなこと、俺にはどうでもいいんだ。
――けど、このとき俺は、ミヨのわずかな変化に気づかなかったんだ――
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