場面①弥夜

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  俺、ミヤ(弥夜)が全てを失いかけることになったのは、中学生2年になるちょっと前。 まだ冬と春の間の季節。 その日は寒く、雨が降っていたんだ。 ――なにかが変わることを望んで、それでも諦めて、なにも変わらない今日が始まると思ったんだ―― 「ミヤ、今日も学校行かないの? 僕、先いくよ?」 「ん、いくかわかんね。ミヨ(弥代)先いってていーよ」 名前で分かるだろうが、俺ミヤとミヨは双子の兄弟だ。 「いつも『わかんね』じゃん。今日こそきてよね。みんな待ってるよ」 「はいはい」 いつも繰り返されるやりとり。 俺の一日はミヨとの会話ではじまり、ミヨとの会話で終わる。 俺にとって世界でいちばん大切な存在。それがミヨ。 俺の片割れ。もうひとりの俺。 さっきの会話で分かったと思うが、俺は学校へいっていない。 いわゆる不登校だ。 実際みんなが待っているのかわからない。 そんなこと、俺にはどうでもいいんだ。 ――けど、このとき俺は、ミヨのわずかな変化に気づかなかったんだ――
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