第①章・憧れの王国騎士団

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第①章・憧れの王国騎士団

「アトス!いつまでご飯食べてる気だい!のんびりしてないでさっさと寝ないと明日起きれないわよ!!」甲高く急かす母の声にはっと我に帰る。 「明日があんたにとってどれだけ大切な日かわかってるでしょ!」…{言われなくともわかっている。} そう…明日は年に一度の騎士採用試験の日である。普通の国では騎士という職に就くには一族が中流階級以上にある必要がある。 しかし、この国は年に一度騎士採用試験というものを行う。簡単に言うと、どんな立場にある者でも騎士になれるチャンスがある…という王の粋なはからいであった。だが一つだけ参加するのに必要な資格があった。17歳以上の健全な者。男女の指定は特に無かった。先月の満月の日やっと17歳になったアトスは、ようやくこの条件を満たしたのである。 ただその試験での採用人数は1名。騎士を目指す者は多く、屈強な若者達が星の如く(少し大袈裟ではあるが)参加するため、結局は狭き門となっている。 しかしだからといってアトスは騎士になる事を諦めるわけにはいかなかった。 幼き日の記憶。今ではもうほとんど覚えていない記憶……断片的に残る記憶…殺意を持った盗賊。盗賊を打ち倒した鈍く光る甲冑を着た騎士。 自分を救った騎士という存在に幼い少年が憧れないわけがなかった……。 「聞いてるのかい…まったく…。」一向に返事をしない我が息子に母は呆れた口調で呟く。 「もう寝るよ。おやすみなさい。」母が心配するのもわかるがその毒に耐えられなくなり、一言で片付けそそくさと自分の部屋へと戻ろうとした。階段を昇った先にある屋根裏部屋。そこがアトスの部屋である。部屋に入ったアトスは、ドアと反対側にある小さな窓を開け外を眺めた。いかにも森の村らしく緑の木々が生い茂っている。 {ついに明日か……。ほんとになれるのかな……。騎士に……。}「いやっ!なるって決めたんだ!!」ここまで言ったアトスは、不意に自分が声を発していたことに気付く。{やばっ;;いつからだ;窓も開いてるし;;誰かに聞こえたかも;;}静まり返った森の中である。おそらく起きてるほとんどの者に聞こえたであろう。恥ずかしくなったアトスは窓を閉めるのも忘れ、薄での毛布に包まって目を閉じた。 普通なら期待と緊張でなかなか寝付けないはずだが、数分もたたずしてアトスは深い眠りについていた………。
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