プロローグ

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 見上げた空はどこまでも広くて、私は飽きずに見上げている。星の海に手を伸ばしても掴むものは虚空の温度でしかない。月明かりが照らす夜、私は空を見上げながら誓いを立てた。繰り返す悲劇を正すために私はこの星から飛び出そう。いつか夢見たあの平和な日々を目指して……。  アーネ・シュトレナーゼという少女は見晴らしの良い丘の上から夜空を眺めている。時は戦乱、人々はいま異星からの侵略者と戦っている。忌憚なく人類を滅ぼすその生命体はいくら駆逐しても現れる。自分と星の未来を護るために一人の少女は立ち上がる。あの日夢見た平和のために。 「父さん…母さん…イリア…行ってきます。」  アーネはそう呟き見晴らしの良い墓地から離れて行く。時刻は既に10時を回っており人の気配は無く、辺りには木々が風に揺れる音しか聞こえない。 「もういいのか?」  不意に男の声がしてアーネは微笑する。これから向かうのは戦場という無慈悲な場所であり、自らが選んだ道だ。彼女は人類を救うことを夢見て過酷な世界に飛び出した。 「えぇ、もういいわ。ルカこそどうなのよ。アンタにはやり残したことはないわけ?」  不適に微笑む青年に多少の苛立ちを覚えてアーネは彼をとっつく。ルカは満面の笑みを浮かべながら頷いて見せた。 「俺もアーネと同じさ。家族なんか当に死んでる。それより急げよ。お前が配属された船の出航はもうすぐだろ?」  ルカはそう言って車のドアを開ける。アーネは左手にする時計を見て少し驚いた。出航まで既に1時間を切っている。荷物は既に船の中で準備は完璧だが、時間配分を間違えたらしい。急がなくては…訂正、急いで貰わなくては出航に遅れてしまう。アーネは口に手を当てながら少し動揺した。
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