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私はすぐ、タケルのもとに向かい、いつものように飲み物を準備した。
タケルと一緒に仕事をするのも数日とない。
「やっぱ、あいついたじゃん」
「それはしょうがないよ。撮影してるんだから」
「はいはい。判ったよ。我慢すりゃいいんだろ」
「また、そんな事言って」
楓の事はまだいい方で、本当に嫌な相手だとすぐに機嫌が悪くなる。
この日は楓も忙しかったのか、タケルの控え室に顔を出す事はなかった。
長い撮影もようやく終わり、やっと帰宅となった。
帰りの車内で、
「芹架」
「何?」
「一つだけお願いがあんだけど」
バックミラー越しにタケルの様子を見ていると、流れる景色を見ながら、
「担当が代わるのまでの間、家に泊まって欲しいんだけど……」
横を向いていてタケルの表情は判らなかったけど、
「うん。判った」
私はタケルの願いを聞き入れる事にした。
担当が代わってしまえば泊まる事も少なくなる。
私とタケルが恋人である事は誰も知らない。
唯一、知っているのは私の元彼だけ。
この日からたった数日だが、タケルのマンションに泊まる事にした。
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