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「嵐士は事務所(うち)に移籍して来たばっかりなので、私もまだよく判らないんです」
「そうですよね。すみません。変な事言ってしまって。じゃ、私はこの辺で」
そう言って、自分の俳優の所へと戻って行った。
(嵐士ね……)
担当している以上は他の俳優達と一緒で、分け隔てなく接しなければならない。
そんな事を考えていると、
「芹架さん。オーディション始まるんで行って来ます」
いつの間に戻って来たのか、前屈みになり私の顔を覗き込んでいた。
「えっ?あー、行ってらっしゃい」
「嫌だな。芹架さん。もしかして先輩の事考えてます?」
「ち、違うわよ。いいからさっさと行きなさい」
私に促された嵐士は、別室へ移動した。
オーディションは、大体数分で終わる。
合否の結果はその時に出るものもあれば、事務所に結果が届く時もある。
この日のオーディションは、事務所に結果が届くものだった。
嵐士は手応えがあったのか、笑顔で私の元へと戻って来た。
「芹架さん。帰りましょう」
周りに挨拶をし会場を後にした。
そして後日、嵐士はオーディションに合格していた。
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