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この日は映画の顔合わせだけで、夜中になる事はなかった。
私は嵐士を自宅まで送り、一旦、事務所に寄ってから、その足でタケルのマンションへと向かった。
休憩中の間に『マンションで、待ってるから』とメールを送ったものの、タケルからの返事はなかった。
マンションに着くと、タケルはまだ帰っておらず部屋は暗いまま。
(まだ、帰ってないか……)
私は部屋に上がり、部屋の灯りを点け、タケルの帰りを待つことにした。
タケルはマネージャーである花南さんに合い鍵を渡していない。
担当したマネージャーには必ず合い鍵を渡し、部屋まで迎えに来てもらっていた。
だがタケルは、私が泊まれなくなるからと渡さない事にしたと言っていた。
タケルの優しさだった。
そのうちにソファーに座り落ち着いてしまったのか、私はウトウトとしてしまった。
どれぐらい過ぎたのか、頬に冷たい感触があった。
(タケル……?)
寝ぼけながらも頬に当てられたそれに触ると、
「ただいま」
そこにいたのは紛れもなくタケルだった。
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