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「お、お帰り。私、寝ちゃったんだ」
「本当だよ。起きて待ってんのかと思った」
「ごめん……」
タケルは笑いながら、
「冗談だよ。それに、芹架の寝顔久しぶりに見れたし」
「もーう」
私はタケルの顔を見て、少しだけ安心した。
「タケル、あのね…」
「何?」
私とタケルの間には、隠し事は一切しないという約束事がある。
「花南さんの言う事聞いてる?」
「あいつ、芹架に余計な事言ったんだろ?」
「…うん。共演者の事怒らせたって……」
タケルは一息吐くと、
「確かに怒らせたかもしんねぇーけど、俺は悪いと思ってねぇー。それに、花南(あいつ)はいちいちつかかってくるから俺も我慢できなくなんだよ」
「タケル…」
タケルは膨れ面をしながら、
「芹架が担当の時は我慢も出来た。でも、今は…」
私はふと、嵐士の言葉を思い出した。
(このままだと、タケルが壊れる…)
そう思った私は、タケルに向き合い、
「タケル、よく聞いて。我慢する事だって大事。タケルだって判ってるでしょう?タケルの目標は何?俳優で一番になる事じゃなかった?」
タケルは私の顔を見ず下を向いていた。
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