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タケルは何かを吐き出すように、
「そんな事判ってる。俺だって大人になろうって努力してる。芹架に会いたいのだって我慢してんだよ」
「タケル。ごめんね。つい心配になっちゃって」
タケルは顔を上げると、
「怒鳴って、ごめん」
「うんん。タケルの気持ち、ちゃんと判ってるから」
そう言うと、タケルは強く抱き締めてきた。
「芹架こそ、嵐士(あいつ)に何もされてないか?」
「私は、大丈夫」
タケルを不安にさせないようにと強がってみたものの、実際の所、嵐士の事を私はまだ判っていない。
「あっ、そうだ。楓とは上手くやってる?」
「さぁ、あの人、最近現場で見掛けないけど」
「そう…。タケル?」
私を抱きしめたままで、タケルは眠りに墜ちていた。
「全くしょうがないな」
私はタケルをソファーに寝かし静かに離れようとした時、身動きが取れない事に気がついた。
タケルは子供のように私の服の裾を掴んでいたのだ。
「芹架……何処にも……行くな……」
(寝言か……)
私はタケルの頭を撫で、
「何処にも行かないよ。タケルのそばに、居るから」
そう言ってしばらく、タケルの寝顔を眺めていた。
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