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「響弥、遊びに行こうぜ!」
頭上から掛かった声に顔を上げれば、親友の悠貴が見下ろしていた。
ふと窓の外に目をやれば、赤みがかった空の下で部活動に勤しむ生徒たちの姿。
午後の授業をすべて昼寝に費やしてしまったのだと気付くがもう遅い。
「お前、寝過ぎ」
先生お冠だぜ、とケラケラと笑いながら悠貴は俺のカバンに勝手に教科書を詰め込んでいく。
「俺、置き勉だから・・・」
「ばーか、今日の宿題だよ。」
ありがと・・・
言いながら俺は伸びをした。
そのまま椅子の背もたれを中心に背中を反れば、逆さまに見える見慣れた教室。
少し新鮮で、もっと見ていたかったが、悠貴が痺れを切らす前に起きあがらなければ、ぐちぐちと何か言われるだろうと思い体を戻す。
「悠貴ー・・・って・・・おい。」
いない。
さっきまで目の前にいた悠貴が。
「・・・ったく、どこ見てんだよ。ほら、さっさと行くぞ。」
声がして顔を向ければ、俺のカバンも一緒に持って悠貴は既に廊下に立っていた。あからさまに嫌な顔して、何か奢れよーなんて言いながら先に歩いていく。
ご丁寧にも俺のカバンは廊下に放置だ。
「今行くー!」
叫んで、駆けるように教室を出た。
その時、ふと振り返った教室が、何故か目に焼き付いて離れなかった・・・
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