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訳が解らずに漫画のページを眺める。
『あぁ、部屋にある女の子と同じ顔だ…。』
そんな事を考えていると、突然イヤホンを耳に当てられる。
「え?」
「漫画見てて、再生するね」
混乱する私を無視して要の指は再生ボタンに伸びる。
私は慌てて、言われた様に漫画を見つめる。
『ハニャァ~、ご主人様ヒナ疲れちゃいました~」
ネコナで声が耳元のイヤホンから聞こえる。
同じ台詞が漫画の中にも…、次々に同じ台詞がイヤホンから聞こえて来る、効果音も混ぜて。
「ヒナたん可愛いだろ。」
やっと見ることが出来た要の笑顔はその言葉と一緒に告げられた…。
「え…あ、うん…」
私は再び混乱しはじめる。
「あの柔らかそうな唇も、大きな目も、二つくくりの髪も、道端に捨てられた子犬をついついつれて帰っちゃう優しさも、もう最高!笑顔が特に萌えるんだ」
笑顔のまま目をキラキラさせて熱く語り始めた要を私は呆然と眺める。
「本当ヒナたん可愛いよ、ヒナたんの彼氏になりたいなぁ」
要の話しをそこまで聞いて私の意識は覚醒する。
「ぁ、要ってヒナちゃんみたいな女の子が好みなんだ」
笑顔で、内心ドキドキしながら私は聞いてみた。
私もそのキャラクターみたいにしたら意識してもらえるかもしれない。
「うん、ヒナたんは理想だよ」
満面の笑みを向けられて私はドキリとしてしまった。
「私がヒナちゃんみたいだったら…?」
そこまで口にして私は慌て口を隠す。
バレてしまう、私が要が好きなのが。
バレたかとドキドキしながら要の顔をチラリとだけ見る。
「二次元だから萌えるんだろ?」
まず、『萌え』って何よ?
なんと毒吐きながら、ガクリと肩を落とす。
望みは薄い…。
「要って12年でかわったよね」
思わず言ってしまった言葉に私は後で激しく後悔する。
慌てて誤魔化そうと顔を上げると、別に気にした様子も無く要が口を開いた。
「12年もたてば当たり前だろ?」
要にとっては自分の変化は当たり前らしい、私にとっては普通の変化で無くても。
少しホッとしたようで、感覚の違いに少し頭が痛くなる。
「胡桃も変わったよな」
要の言葉に私は弾かれるように顔を上げる。
「本当?雑誌でよくお洒落について調べてるのよ、昔よりは可愛くなったかな?」
上目使いで要を見つめて首を傾げて見せる。
「ヒナたん以上に可愛い子はいないよ」
まるで恋人の自慢をするように要は答えた…。
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