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私が……貴方に初めて出会ったのは、微かな雪の匂いがする
こんな寒い日の朝でした
―…‥昨晩から降り続いた雪が
町全体を包み込み
普段と変わらぬはずのこの町も一瞬にして銀一色。
何故か初めて訪れた町であるかのような朝まだきの頃
淡く反射する光の粒子と、
霞む煙り状の大気が地面スレスレを這い渡り
いつもとはどこか違う幻想的な景色を映し出していた
常日頃から、風流のフの字も知らない血なまぐさい自分が
そんな景色に珍しく心を奪われるのと同時に、妙に心が躍ったのを今でも覚えている。
なんだか今日は、良いことがありそうだ……と、
東の空から徐々に黄金色に染まりゆく様を眺めながら、
雪に反射する淡い光に目を細める
冷えた空気は厳しく頬を霞め
ピリリとした痛さを伴い、
吸い込む度に肺を凍らせるような危機感は、まさに死闘の最中のように心地良く、思わず頬を緩めていた
そんな腑抜けた面持ちのまま見上げた空には、呼吸の度に生まれ……儚げにたゆたう吐息の帯。
不思議とそれが、自らの手で殺めた数多の魂とが重なったように見えて、
とめどなく生まれては消えるその白い霧雲を自然と目で追いかけていた
「…………隊長?どうかなさいましたか?」
朝焼けに染まりゆく空と、
昇っては儚く消えるそれをぼんやりと眺めていた時、
それを心底心配した部下の一言により、ようやく我に返った
第一、今は隊務中
いつ何時、白銀の刃が飛び出すやも知れぬ緊迫した状態なのだから、それは致し方ない事
今、自分に声を掛けた彼を初め
周りを見渡せばキリリとした面持ちが連なっている
だがしかし、自分にとってみれば、全くもって物足りない
そんな気の緩みが随所に現れ
独り、物思いにふけりながら笑んでいる自分は到底他人には理解しがたい事だろう
事実、いぶかしげに自分を見上げる部下達は心配そうに眉を下げ、何かを確かめるかのように弱い声をかけてきている
だがその表情、口調すらも
今の私には更なる笑いを誘うキッカケにしかならないようだ
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