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「―――ふっ……だって皆さん
口からモクモク煙を出して……
なんだか、土方さんが沢山いるみたいなんですもん」
自らの手と意識で、意図も簡単に消え去ってゆく命を偲んでいる訳では決して無い
無論、後悔すらもしていない
殺らねば、殺られてしまう
それは当然の論理
ただ、ふと白煙りがそれと重なって見えただけの事。
だが、それをどうして部下達に説明するべきか……?
面倒くさくなった私は、ていよく思い付いた上司を引き合いに出してそれをごまかしにかかった
けど今度は、それを口ずさんだ後に煙に巻かれる土方さんを想像してしまい、心底可笑しくなってくる
目の端に溢れた涙を拭いながら
とめどなく込みあがる笑いを、掌で口元を覆う事で落ち着かせた
この、さっきから笑い続けている男……
名を“沖田総司”と云う
背が高く、緩やかに束ねられた漆黒の流れる髪を頭の高い位置でひとつにまとめ
ケラケラと喉を転がしながら笑う大きな口は、なんとも形良い
また、彼に纏う空気は生まれたての雛鳥のように柔らかで実に清々しいものだ
誰が見ても、どこからどう見ても優男の何ものでもないのだが…… しかしながら、人は見掛けに寄らぬと昔から云うではないか
実のところ一度(ヒトタビ)、剣を握ればまさに鬼に金棒。
風の様に立ち振る舞い、
霹靂(ヘキレキ)の如く重い一刀を
それはそれは軽やかに繰りなす
まるで風神の如き無駄の無い完璧な身のこなしは天性の才のなせるもの。
その一刀打を浴びた輩は、
何がなんだか分からぬうちに床に転り、既に事切れている有り様である。
そんな麒麟児、沖田総司が所属するは――――
今、良い意味でも悪い意味でも
最も京の町中に名を轟かせている最強集団
会津藩御預かり
京都守護職藩主、松平容保を主とした、泣く子も黙る『新選組』
その強豪揃いの中でも、豪剣と名高く剣術に秀でていて、
また若くして副長助勤、一番隊組長をそつなくこなす彼
見た目はこれだが……
こう見えてかなりの剣術持ちの様である。
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