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寒空の中……なんとも穏やかなその光景は、子犬が二匹
じゃれているかの様であり
その周りを囲む彼等の部下達は
胸元でほっこりとぬくいものがこみ上げていた
そんな事とはつゆ知らず、
沖田が尚も笑いを堪えている端で藤堂が頬を膨らませながらに
『教えてよぉぅ』を、弱々しく連呼してる。
眉を下げ頬を膨らませながら、
何度も詰め寄るそんな藤堂に、
沖田の中に元々存在しているドス黒い何かが沸々と膨れた……のだが―――
それをなんとか寸でで押さえ込んだ彼は、仕方なく……
ホントにしかぁ~たなく、
部下達との今までのやり取りを口にする
まぁ……沖田にとっては笑い話しのつもりだったのだが、
藤堂はそれを笑うところか……
直後、あからさまに顔を引き攣らせて小さくうめいた
「うっわぁ!!ってか……土方さんが沢山いたらヤじゃねぇ?」
考えただけで寒気がするよぉ!!
そう叫んで、大袈裟に肩をすくめゲンナリしている
藤堂、独りだけでは無い
それを傍らで聞いていた隊士達も、千切れんばかりに首を縦に振って彼に賛同した。
中には小刻に体を震わせながら顔面蒼白で、今にもぶっ倒れそうな者までいるのを見る限り
“土方”という人物像はまさに彼等の中で史上最強、最悪であると想像できる
しかし、そんな最中ですら独りひたすら笑んで和んでいるのは
…………いや―――、
先程とは明らかに異なる
異質で黒ぉい笑顔を宿していた沖田は
誰の目から見てもわかる程、実に妖しく頬を上げ目を薄めると
『帰ったら……土方さんに
“この事”も報告ですねぇ!!
ねぇ~っ?平助ぇ~っ』
そうサラッと悪魔の如く死の宣告を呟いた。
それに対し、周りが一瞬ざわめきたち重い空気に包まれたのは今更言うまでもない……。
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