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好奇な視線も何のその、
気にも留めない沖田は、尚も
羽衣の肩を抱いたまま無表情で歩みを進めていた
そんな横顔を不安気に見上げた羽衣も、緊張と不安が尚更増すばかりで
どうしようも無いそれを抑えようと、頼りなく軋む自らの肩を弱く抱く事で何とか虚勢を保っていた
そうして、ようやく目的の場所に着いたのか沖田は、とある部屋の前で突然ピタリと足を止めると、
おもむろに雪駄を脱ぎ捨て縁側へと片足を掛けた
そして羽衣には、無言でその場に留まるよう手で合図をし、
自分はさっさと障子を開けると部屋の中へと消えてゆく
結果、羽衣独りが寒々と北風が吹きつける庭の隅に残される事となる
彼がその部屋に消える直前、
“逃げようなどとは思わないのが身の為ですよ……?”
綺麗な薄い唇は確かにそう自分へと警告していった
普段であればこの時点で
とんずらするのが普通だろう
だが今回は厄介だと、羽衣は目を細める
今考えれば、最初から逃げられない事を自らわかっていたのかもしれない……と、半ば諦めついでに軒先から覗くおぼろげな月を羽衣はぼんやりと見上げて呟いた
――――――――――――…‥
――――――…‥
一方、小さく部屋の主に“一応”は声を掛けた沖田は、無論
返事など待たず勝手に障子を開けて入り込むと、手馴れた動作で適当な処に腰を下ろした
そうして、至極真剣な表情を一瞬、その顔にしたためたかと思えば
今度は、気の抜けた猫のように間延びした声を発する
「土方さぁぁ~ん☆お願いがあるんですぅぅ~☆」
「断わる――――!!!!」
そんな沖田の願いを聞く前にして一刀両断したのは他でも無い
新選組鬼副長、土方歳三その人だった
「まだ、何も言ってないじゃないですかっ!!」
ぶぅ~っと、子供のように口を尖らせ、駄々をこねはじめる彼に対し、土方はギロリと睨みを効かせ黙らせる
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