――雪華…セッカ…

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   唖然とする二人をよそに、 土方は何度も言わせるな…… そう照れたように呟いてから、 「でっ?祝言はいつにするんだ?」 そう、心なしか楽し気に、二度確認する彼の問いを完全無視し 羽衣は瞬時に体を反転させると隣に飄々(ヒョウヒョウ)と座る沖田に容赦無く掴みかかった。 「あっ!!あんたぁ―――っ!! ここまで来ればうちが逃げられない思て……っ卑怯やないっ あぁあぁ、そないな魂胆やったんやね? だから人質まで捕って、何も言わずに!!うっ……うちを連れてきたんかぁ――――っ!!!」 グッと狭められる眉、沖田の胸ぐらに置かれた手は怒りでフルフルと振え、羽衣自信も余りの苛立ちにその振動は押さえられない。 だが、修羅場と化した二人の その傍らで、ただ黙って傍観していた土方は一度、呆れたように視線を畳に落とした後、何ともやるせない盛大な溜め息を吐いた 「総司おめぇ……、いくら女に目覚めたからって物事には “順序”ってもんがあんだぞ?」 女はなぁ……?無理に手に入れようとしても“スルリ”と逃げちまうもんなんだよ 駆け引きが大事なんだぜぇぃ? そう言って額に手をやる土方は鼻を鳴らして続けざまに言う これだから女に免疫がねぇ~奴は駄目なんだよっ……と――― しかしながら、あえて言わせて頂くと少々、着眼点がずれている様だ 『人質』という所に、もっと気を置いて欲しいところである 常々、総司ならやりかねないと前々から思っていたのか…… 弟分がようやく“普通の男”になったのだと、嬉しさの余り 早とちりしてしまったのか それはもうこの際、どうでも良いような気がしてならない ・
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