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二人は、普段は滅多に使わない、人と車の通りが多い道を使って帰ることにした。
今日は親が帰って来るのが遅いからという理由で、少し遠回りのその道を通る。
美音
「この道も久々に使うわね」
宗谷
「うん…でも、ここは人がいっぱい居るから、僕はあまり好きじゃないかな」
美音
「そうなの?」
宗谷
「うん…」
宗谷が言った事は、半分正しいが、半分間違ってる。
というより、嘘をついていた。
それは美音がここを通る理由にあった。
美音
「…風間くん居ないかな?」
宗谷
「………」
風間くんとは、美音の好きな人である。
宗谷は、はっきり言って風間くんという人の事が嫌いだった。
なぜなら、いつも美音が風間くんを見つけると、宗谷をその場に待たせて、おしゃべりしに行ってしまうからだ。
――いつか大好きな美音を取られるんじゃないかって不安にもなるから。
宗谷
「今日は居ないんじゃない?」
宗谷は声のトーンを少し落として、呟く程度に言った。
美音
「うーん、そんなはずは……あっ!」
――また美音は風間くんを見つけてしまった。
美音
「風間くん見っけ。宗谷、悪いんだけどいつも通りここで少し待っててね?」
宗谷
「………」
声のトーンが急に上がり、宗谷にそう言ってきた姉、美音に対し、宗谷は沈黙した。
美音
「?じゃあ待っててね」
普段は絶対に
「うん」
と言う場面で宗谷は沈黙していたので、美音は少し気になりはしたものの、それでも風間くんを見失う訳には行かないので、反対側に居る風間くんの所へ行くことにした。
宗谷
「お姉ちゃんのばか…」
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