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居眠りしていて校長や来賓の挨拶なんて聞いてやしなかったけど、退屈な入学式もようやく終わり自分の教室へ向かう。
どうしてこうも式と名の付くものは退屈なのだろうと考えながら、顎が外れんばかりの大きな欠伸をポクポクと手で押さえる。
「あれ?明香じゃない?」
突然名前を呼ばれてキョロキョロしていると、誰かに肩を叩かれた。
「明香、久しぶり」
「あ~っ、未佑!どうしたの?S高受けたんじゃなかったの?こんな所で逢えるなんて偶然だね」
中学校からの親友・桐島未佑の登場である。
「あそこダメだったんだ。ここはスベリ止めに受けてたから。それより明香、入学式遅刻したでしょ?」
「間に合ったよ。超ギリギリ。先輩らしき人に案内してもらったんだけどさ、それが超ムカつくの!」
「はいはい。わかったから。とりあえず教室行こ?話はそれから。それにしてもあんた、相変わらずの方向音痴ね」
未佑が言うように、明香は自他共に認める折り紙付きの方向音痴なのだ。
交番でお世話になったことも数知れず。
地図を見ても無事に目的地に辿り着いたためしがない。
「それはそうと明香、今日このあと空いてる?ウチのお兄がここの三年じゃん?それでなんかよくわかんないんだけど、明香に紹介したい人がいるらしいのよね。ヒマなら付き合って?」
そして明香たちは、初めてのホームルームのあと、学校の近くにある喫茶店・夢遊館にやって来た。
「未佑はここにはよく来るの?」
「あたしは初めてなんだけど、お兄たちはよく来るみたい。ここコーヒーが美味しいらしいよ」
夢遊館。
なんて洒落た店だろう。
店内のあちこちに宇宙空間を思わせるような装飾が施してある。
店長である松本大志さんの趣味なのだそうだ。
明香自身、学校見学などで何度かこの通りを歩いていたはずなのに今まで気づかなかったなんて、全くバカもいいところだ。
「いきなり呼び出したりして悪かったな」
未佑の兄・恭平ともう一人。
明香たちのテーブルにやって来た。
「こんにちは、恭平先輩。わたしに紹介したい人って…?」
「コイツ、俺のダチで清水直樹。未佑のダチにおもしろい子がいるって話になってさ。どうしても清水が明香ちゃんに逢いたいって聞かなくてさ。突然で悪かったな」
「俺、清水直樹。ヨロシク」
「………」
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