―第一章―

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そんな事を気にしている暇なく、とにかく教室へと走っている。 澪達の教室は、三つの棟があり、生徒達の教室は東棟にあり、澪達の教室は一番奥なので、息を切らしながらも走りに走らないといけない。とにかく必死に走っている内にやっと教室の前に着いて、中に入る。 入ると、一瞬だけクラスメイトが澪達を見た。だが、澪達が手を繋いでいる所を見て、二度見た。 ちゃんと繋いでいる所見て、二人を囃し立てる。 「おぉー! 夫婦の二人が仲良く手を繋いで登校して来たぞ!」 ピューピューと口笛を吹いたり、指を指して二人の事を他のクラスメイト達に教えたり等をして、二人をからかった。 クラスメイト達にからかわれて、やっと自分達が手を繋いでいる事に気付き、バッと手を離す。 離した時、小夜子は恥ずかしい気持ちと悲しい気持ちが半分半分あった。 もう少し手を繋いでいたかったなと思ったりもしたが、これ以上クラスメイト達にからかわれるのは嫌なので我慢した。 顔を真っ赤になりながら、自分の席に座る。 二人の席は窓側の一番後ろで、隣同士。 「すまん。早く気付いていれば、からかわれる事もなかったんだが」 澪が申し訳なそうに小夜子に謝った。 「気にしていないから。謝らないで。私も気付かなかったんだから」 小夜子も澪に謝り、二人は黙り込む。黙り込んでいるとチャイムが鳴り、担任が入ってきた。
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