―第一章―

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「先生、俺…もっと伊藤先生の授業を受けたいのに、怒っていたら授業がなくなってしまうじゃないですか…ぐすん」 澪は、涙を流して鼻をすすり、その姿を伊藤先生が見ると、 「ごめんね、澪くん。私……私は頑張って授業をするから。よし、やってやるぞ!」 怒りが治まって喜びに変わると、張り切って授業を再開した。皆は、その事にも驚いていたが、それよりも驚く事が合った。 それは……澪がさっきまで泣いていたのに、今は泣き止んでおりニヤリとまんまと騙された伊藤先生を見て笑った。 そんな澪に驚きを隠せないクラスメイト達、小夜子と彰は知っていたので驚く事はないが、相変わらず黒い澪は怖い、 「相変わらず黒い澪は怖いね。あの状態になったら口でも拳でも負けるわ」 「俺もだ。あんな状態になったら勝ち目がない」 「いつも負けていなかったっけ? 彰は」 と思っていた。彰は小夜子の言う通りでいつも澪に負けていた口でも拳でも。 それが当たっていたため、心にグサッと見えない矢が刺さる。 「な、なわけないだろ? 俺だって、俺だって、勝ったことくらい……」 「ないんでしょ? 一度も」 もう一度彰の心に見えない矢がグサッと刺さる。
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