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「姉貴の言うことは分かるけど、大事な事なら直接言いに来るのは分かるが、さっきも言ったけど、ただ家族で食事をしにいくんだったら、メールや電話でいいだろ!」
必死になって言う澪を見て、百合子はグフフと気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「な、なんだよ。その笑いは」
百合子の楽しみは澪を弄り、その度に見せてくれる表情を見ること。
まるっきりのドSの百合子。百合子自身も承知している。だけど、弄るのは澪だけ。
他の人には弄ろうとしない、いや弄ろうと思わないからだ。何故? なのかは分からない。
百合子は、そのことばかり考えていた。何で゛澪゛だけなのかと。
それを友人に聞いてみると、笑顔だけ返ってきて、『何で教えてくれないの』、と聞くと、『自分で考えな』、と返ってきた。
それ以来、自分で考えていた。それが弟に対する゛愛゛の表現の仕方だと知らずに。後、もう一つの意味を含めて。
もう一つの理由も考えられるが、今はそこまではいかない……まだ。
「まあ、来てしまったんだから仕方ないじゃない。ごめんね、小夜子ちゃん、彰くん。澪を借りて行くわ」
百合子は澪の手首を掴み、車の助手席に座らせて、そして運転席に座り、車を走らせて父と母が待つレストランへと向かった。
そんな嵐のような光景に小夜子と彰は、ただ呆然としたまま突っ立っていた。
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