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その次の日だっただろうか…
寮の通路を歩いていると、また、彼の姿が前方から見えた。
見た目が綺麗だからか、
通り過ぎてからする甘い香りのせいだからか、
なんだか目につく。
「こんな遅い時間に誰かの部屋にでも行くのかい?」
時刻は24時手前。
普通、誰かに会いに行くような時間ではない。
だからだろうか、先輩はそう聞いてきた。
「先輩こそ、どちらへ?」
そう聞いて軽く微笑めば、先輩はちょっと驚いたような顔をして、妖艶に微笑んだ。
「ちょっと約束があってね」
「そうですか、」
そう言って軽く会釈し、また歩こうとしたところで、先輩は僕の右腕を掴んだ。
「今度、話さない?」
「何を、‥…ですか?」
なんだか知らないけど、戸惑ってしまう自分がいた。
「君は、僕と同じ匂いがする」
「‥…え?」
「是非、君とはちゃんとした時間に会いたいな」
"ちゃんとした時間"?
「明日の昼休み、食堂の奥の方の席で待ってるよ
必ず来るんだよ?」
「え、あ…はい」
半ば強引に取り決められた昼食会。
これを機に、僕は先輩とよく話しを交わすようになった。
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