第二章

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< 現在 > < 日本 > < 夏 > < ……………… > ?:「…リザ…リザ…」 頭の中に優しい声が聞こえてくる。 その声は朝になる頃に聞こえる。 ?:「…ん…」 黒い髪と黒い瞳を持つ十代後半の男がベッドから身体を起こし、前髪をかき上げる。彼の顔立ちはハッと息を飲むほどに整っている。寝起きの表情もその顔立ちのおかげで綺麗だった。 男:「…朝、か」 この男の名は『臣莉也(ジン・レイヤ)』。高校3年生である。 寝癖の付いたままで莉也(れいや)はリビングへと向かう。 < リビング > < コポポポ… > 莉也は目覚めのコーヒーをコップに注ぐ。 莉也:「…んぐ…」 口の中にコーヒーの苦みが広がる。 莉也の家には彼以外、誰も居ない。彼の両親は二人とも物心がついた時から居なかった。 別に莉也は自分の両親を知りたいとは思わなかった。彼に家を提供してくれたのは言うまでもなく、顔を知らない両親だった。 高校生の莉也が一人で生きていける理由があった。 それは… < チラリ > 莉也はコーヒーを飲みながら視界の先に壁に立て掛けられている『黒い鞘(さや)の剣』が目に入る。 莉也:「……………」 その黒い剣は両親が家の他に残してくれた物。 そして、高校生の莉也にとって、学業よりも大変だった。 彼は日々、『生きるか死ぬかの間(はざま)』に居た。 それから莉也は朝食を軽く済ませると学ランに着替え、髪も整えてから両親の形見である黒い鞘の剣を鞘と同じ色をした剣道の竹刀袋に包んでから家を出る。
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