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< …コクン >
リザロブが小さく頷(うなず)く。
黒服:「!、リザロブっ」
黒服の男はリザロブに頷いてほしくなかった。
確かに黒服の男は『彼等』から『頼み事』が済んだら、リザロブの『抹殺(まっさつ)』する事を頼まれていた。
< スラッ… >
リザロブが左手に持っていた剣を抜く。
剣先を天井に向けて、掲(かか)げる。
リザロブ:「…俺は彼女に『あの魔法』を放った時から心に決めていた。…自分だけ…生き残る事は出来ない。俺に眠るこの力を使い、再び彼女に会えることを願う」
黒服:「待ってよ!、どうして…どうして君が死ななきゃいけないのさっ」
黒服の男はリザロブが自分の剣で死のうとしていた。
< ふっ >
リザロブが天井に掲げていた剣から視線を黒服の男に向けて微笑む。
リザロブ:「お前が…『あいつら』から命を狙(ねら)われないようにさ。…俺の力は『あいつら』に見つかりやすい。…だから…『転生』してから再びこの地に帰ってくることにした」
黒服:「…は?…『転生』!?…待ってよ、転生って…『生まれ変わる』ってこと?!」
リザロブは頷く。
リザロブ:「…大丈夫。俺が彼女を想う気持ちが続く限り…俺は必ず、此処に戻ってくる。」
黒服の男はリザロブの言葉に聴き入る。
< ぽろっ… >
彼の瞳から涙が零(こぼ)れる。
< スッ… >
リザロブは剣を両手で掴み、切っ先を自分の心臓に向けて持つ。
リザロブ:「シルフィリア…俺は君を愛している。…必ず、君の元に戻ってくる。だから…待っててくれよな…?『深窓の衝撃(ソート・トランスファー)』」
< ドクン >
彼の声に黒い剣が脈打つ。
< スッ…どすっ >
リザロブは自分の胸に剣を貫(つらぬ)く。
< ……どさっ >
黒服:「リザロブ…ボクは…」
氷漬けにされた美しきシルフィリアと、彼女を封印したリザロブの哀しい結末。
そして、そんな彼を黒服の男が見送った時から…全ては始まる。
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