449人が本棚に入れています
本棚に追加
< 数十年前 >
< 日本 >
< ぱたぱたぱた… >
舗装(ほそう)された道が多くなりだした時代、一人の少女が学校帰りに友達の家へ向かって駆けていた。
少女の年齢は10歳ぐらい。彼女短めの髪は黒く、クリクリとした目が特徴的だった。
少女:「あー、遅れちゃう~っ」
当時の女の子はしとやかで、大人しくするのが普通だった。
彼女はお転婆であり、そんな世間体を気にしていなかった。
< ガツッ >
少女:「ぁ」
急いでいたため、足元への集中が全くいってなかった。
そこにあった石で彼女は蹴つまずく、前のめりになる。
両手を前に伸ばし、地面がゆっくりと近づいてくる。
少女は怖くなって目を閉じる。
< ……………… >
少女:「…あれ?」
少しして、違和感に気付く。手や足に痛みが全く感じず、身体が浮く感覚に捕われている。
少女はゆっくりと目を開けると、やはり身体は宙に浮いている。
少女:「!!、ぇえっ?!…私…一体…」
少女がパニックに陥(おちい)っていると、頭の上から「クスクス」という笑い声が聞こえた。
彼女は首を捻(ひね)り、後ろを振り返った。
少女:「?!」
彼女を蹴つまずき、こけるのを救ったのは、当時では珍しかった『外国人』だった。
その外国人はスーツを綺麗に着ていて、シルクハットを被(かぶ)った老紳士だった。彼は茶髪で、瞳が青かった。
老紳士は片手に杖を持ち、少女の腹部に片方の手を回していた。
老紳士:「…お転婆さんだね。…私が通り掛からなかったら…君のかわいらしい顔に傷が付くところだったね」
彼はそういって少女を下ろし、杖を握っていない手で彼女の頬に触れる。
少女は人生初、外国人を見たので顔を見上げたままア然としている。
老紳士:「クスクス…」
その表情が可愛かったので老紳士が再び笑う。
彼はゆっくりと頭を撫でながら言う。
老紳士:「走る事は健康でいいが…気をつけるんだよ」
そういって老紳士は少女に背を向けて歩きだす。
少女:「……………」
少女は老紳士の背中を不思議そうに眺(なが)めながらずっと見送った。
最初のコメントを投稿しよう!