第一章

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< 数十年前 > < 日本 > < ぱたぱたぱた… > 舗装(ほそう)された道が多くなりだした時代、一人の少女が学校帰りに友達の家へ向かって駆けていた。 少女の年齢は10歳ぐらい。彼女短めの髪は黒く、クリクリとした目が特徴的だった。 少女:「あー、遅れちゃう~っ」 当時の女の子はしとやかで、大人しくするのが普通だった。 彼女はお転婆であり、そんな世間体を気にしていなかった。 < ガツッ > 少女:「ぁ」 急いでいたため、足元への集中が全くいってなかった。 そこにあった石で彼女は蹴つまずく、前のめりになる。 両手を前に伸ばし、地面がゆっくりと近づいてくる。 少女は怖くなって目を閉じる。 < ……………… > 少女:「…あれ?」 少しして、違和感に気付く。手や足に痛みが全く感じず、身体が浮く感覚に捕われている。 少女はゆっくりと目を開けると、やはり身体は宙に浮いている。 少女:「!!、ぇえっ?!…私…一体…」 少女がパニックに陥(おちい)っていると、頭の上から「クスクス」という笑い声が聞こえた。 彼女は首を捻(ひね)り、後ろを振り返った。 少女:「?!」 彼女を蹴つまずき、こけるのを救ったのは、当時では珍しかった『外国人』だった。 その外国人はスーツを綺麗に着ていて、シルクハットを被(かぶ)った老紳士だった。彼は茶髪で、瞳が青かった。 老紳士は片手に杖を持ち、少女の腹部に片方の手を回していた。 老紳士:「…お転婆さんだね。…私が通り掛からなかったら…君のかわいらしい顔に傷が付くところだったね」 彼はそういって少女を下ろし、杖を握っていない手で彼女の頬に触れる。 少女は人生初、外国人を見たので顔を見上げたままア然としている。 老紳士:「クスクス…」 その表情が可愛かったので老紳士が再び笑う。 彼はゆっくりと頭を撫でながら言う。 老紳士:「走る事は健康でいいが…気をつけるんだよ」 そういって老紳士は少女に背を向けて歩きだす。 少女:「……………」 少女は老紳士の背中を不思議そうに眺(なが)めながらずっと見送った。
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