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少女:「あっ…」
少女は息を飲む。
それは…数日前に出会った外国人の老紳士が被(かぶ)っていた『シルクハット』だった。
僧侶:「ん?」
突然固まってしまった少女を不思議そうに僧侶は見つめる。
彼女はシルクハットを指差しながら言う。
少女:「これ…もしかして…茶色い髪で…青い瞳をしたおじいちゃんが被ってなかった…?」
僧侶:「!!」
僧侶は彼女の言葉に目を丸くする。彼は小さく頷く。
僧侶:「そうだよ、お嬢ちゃん。…顔見知り…だったのかな?」
僧侶は無仏を知る人がいて安心する。
少女は困ったような表情をしている。
少女:「…うぅん…知らない。私がこけそうになった時に助けてくれた人。とっても優しい顔をしてたのに…」
< うるっ >
そういって少女は目に涙が溜(た)まる。
それを見た僧侶が慌てる。
僧侶:「お、お嬢ちゃんっ…、おじいさんの冥福を…一緒に祈ろう」
< くぃ >
少女が僧侶を見上げる。
少女:「めいふく…?」
< ニコッ >
僧侶が微笑み、手を合わせる。
少女が彼に続き、手を合わせた。
少女:「…おじいちゃん、助けてくれて…ありがとう。おじいちゃん、『めいふくになって』ね!」
冥福の意味が分からなかった彼女の横顔を僧侶が優しく見つめていた。
少女は、その老紳士を忘れないようにシルクハットを僧侶から貰(もら)うのだった。
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