Prologue

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ビルの間、緞帳(どんちょう)のように重い水の幕の向こうから、微かに人影が見える。 天気さえも関係ないと主張するようにその人影は、傘も差さずに近づいて来る。 早過ぎもせず遅すぎもしないペースで歩く彼は、ずぶ濡れをものともせずにまっすぐ坂をのぼっていく。 思い詰めたような表情で、左手には白い紙袋を持って、坂の上を目指して歩きつづける。
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